こけら寿司の歴史

1,700年代
(江戸時代)

江戸時代中期1700年代前半頃現在のおすしの原型となるお酢を使った『早ずし』が誕生しました。『早ずし』は、飯にお酢と塩で味付けしたものです。

1,860年代
(江戸時代)

こけら寿司の誕生
高知県では江戸時代(約160年前)から、祝いごとや神事、冠婚葬祭や出産祝い、還暦祝いなどのハレの日には必ず、親戚や近所の女性が大勢集まり、みんなで縁起を担ぎ、こけら寿司を作って食べられてきました。

1,864年
(元冶元年)

高知県野根の素封家、北川家の幕末期の記録に1,864年(元冶元年)出産祝いの見舞いの品に「鮓 鈔鉢入 但しこけら上仕成味よし」や「鮓大鈔鉢二人 但こけらと鯵之すがた つきかへ上仕成大もり」などと書かれている古文書がある。(高知県史編さん委員会、高知県史近世史資料編)
この時代には既にこけら寿司が食べられていた。

1,900年代
(明治時代後期)

明治30年以降、製氷産業が盛んになり、漁法や流通の発展と相まって、これまで生の刺し身が扱えなかった寿司屋も、ネタを氷で冷やして保存できるようになりました。煮切り醤油をネタに塗って出す、現代では一般的な『握りずし』は、この時代に確立されたスタイルです。

1,950年頃
(昭和時代初期)

昭和時代、高度経済成長期になると、衛生上の理由から、これまでメジャーであった屋台の寿司店が廃止になってしまいます。

1,958年頃
(昭和時代中期)

昭和33年、史上初となる回転寿司が大阪で開業したことを皮切りに、寿司は庶民的な食べ物としての地位を再び取り戻しました。

2,020年代
(現在)

現在のこけら寿司
現在、こけら寿司を作る家庭は激減し、高知県の東洋町の郷土料理として引き継がれ、東洋町白浜では毎年1月に「こけらまつり」が開催され、「こけらずし」が振る舞われる。

こけら寿司は、にぎり寿司よりも歴史が古い

1,800年代前半頃、江戸の街で『握りずし』が誕生しましたが、一般的に『握りずし』が食べられるようになったのは明治30年以降(約125年前)です。
高知県で、こけら寿司は江戸代(約160年前)から一般的に食べられていたといわれています。

こけら寿司の歴史

高知の言葉で宴会の事を「おきゃく」や「よばれ」と言い、沢山作って家族や近所の人を招いて振る舞う文化があります。
昔は「○○さんちで、おきゃくがあるき、行こうよ」「うちで、よばれするき、来てくれよ」という言葉が飛び交っていました。
高知県民(土佐人)の心意気は、おもてなしが大好き。
女性が台所に立つことなしに、皆と一緒に宴に参加して楽しめるように考えられたのが皿鉢料理(さわちりょうり)であり、その中でも欠かせないのが、こけら寿司である。
皿鉢料理は、とにかく美味いものを沢山盛り付け来客をもてなす。
料理は男性が魚を捌き、女性は煮炊きを担当する。下ごしらえに時間を要するため、つくるのに2日間かけるときもあるという。
昔の農村には、農作業を共同でおこなう「結(ゆい)」と呼ばれる集団が組織されていたて、結は、さらに「汁組」という小グループに分かれ、「おきゃく」があれば、協力して調理、配膳、片付けまでを手伝った。
その中には素人ではあったが「器用料理人」と呼ばれる腕に覚えのある人たちがいた。「あの家の寿司は上手い」「カツオのたたきといえば、あの家のオヤジ」など地元民たちは、その腕を評定し合っていたという。
しかし、昔はお米が貴重品で、普段はあまり食べられませんでしたが、ハレの日など、特別な祝いの席で振る舞う目的で、こけら寿司は縁起物なのです。
また、小さいサイズで、大量のお米を食べられるように押し固めた、こけら寿司は、相当な贅沢品で、誰からも喜ばれる一品でした。
しかし、時代とともに高齢化、過疎化が進み「おきゃく」「よばれ」が減っていき、現在では、こけら寿司を作る機会、食べる文化か減少しています。

こけら寿司作りに関して

昔は、村の近所の人が集まって、こけら寿司を作る時に具材を並べるのはベテランのお年寄りの作業と決まっていたそうです。
若い女性は、ベテランのお年寄りが、こけら寿司の具材を並べるを見て「私も早く、こけら寿司の具材を並べるようになりたい」と憧れたそうですが、現在では、そのような文化も無くなったそうです。

こけら寿司が昔から変わらない理由

高知県は海のイメージが強いと思うのですが、実は森林面積比率が日本一で、山が多いのです。
周囲を峻険な山に囲まれ、南側には太平洋が広がっていて、土讃線開通まで(全通は1951年)は「陸の孤島」の状態でした。
高知県(四国)は他の地域との交流が限定されたことが、独自の食文化を育むことに繋がり、郷土寿司が昔のまま残ることになりました。

こけら寿司と酢

土佐の人は「柚子酢」と書いて「ゆのす」と言います。
高知県は温暖な気候なので、酢を好む傾向があり(一部の地域では米酢も使いますが)酢飯をゆずなどの香酸柑橘(ぶしゅかん、直七など)で作る文化がありますので、こけら寿司も柚子酢(ゆのす)が使われています。
昔のこけら寿司は、現在よりも、もっともっと酸っぱかったらしいのですが、時代とともに万人に合うように、まろやかな酸味になっています。